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平成27年度仕事と介護の両立推進シンポジウム講演要旨

平成27年10月21日(水)、日経ホールにて「仕事と介護の両立推進シンポジウム」を開催しました。

基調講演

「介護離職から社員を守る」
<講師>
三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員
女性活躍推進・ダイバーシティ・マネジメント戦略室 室長
矢島 洋子 氏

  • 正社員として働きながら介護をしている人の割合は、男女であまり差はなく、中高年の正社員は圧倒的に男性が多いため、実数ベースで考えると、働きながら介護をしている人の多くは男性ということになります。
  • 介護といっても様々で、どのような役割を担うのかによって介護の頻度が変わり、必要な働き方への対応も変わってきます。離職者と就業継続者では担う介護役割が違うというデータがあります。就業継続者は自ら身体介護をする割合は低く、介護サービス事業者に担ってもらう割合が高くなっています。離職者は、その逆です。介護休業期間も、離職者は自ら身体介護や見守りにあて、就業継続者は手続きや調整業務をしている傾向があります。本人が直接介護を抱え込んでしまうと、続かなくなり離職に結びつく危険が高まります。
  • 両立していく上で、介護サービスが不十分だと思われがちですが、実際は限度額まで利
    用していない人も多いようです。働きながら介護をするには、もう少しサービス利用し、
    自身の負担を減らすことが大切です。
  • 働き方をみても、仕事と介護の両立経験者の大部分は、企業の支援制度をあまり利用していません。有給休暇や半日・時間単位の休暇で対応し、介護休業や介護休暇取得者は非常に少ないです。
  • 現在、法定の介護休業(93日)を1年等に期間延長している企業もありますが、介護休業は自ら介護するためではなく、両立のための体制を作る準備期間として使うのが本来の主旨であるため、あまりお勧めできません。できるだけ早く職場復帰し、必要な時に取れる短い休暇や働く時間帯や場所の調整など柔軟な働き方で、仕事を継続していくことが望まれます。
  • 企業にとっては、介護休業の利用方法をきちんと社員に周知することが重要です。今は
    法律で利用は介護者一人につき1回利用が基本のため使いづらいですが、次の改正で分割取得が検討されており、実現すれば今よりも利用しやすくなります。(※)
  • 介護休業などの制度利用者が少ないため、企業は社員の介護状況について把握できていないことも課題になっています。実際、介護について相談をする相手は、家族や親族、ケアマネジャーが多く、勤務先は非常に少ないという実態があり、企業にとっては社員から相談をしてもらえるようにしていくことが重要です。
  • 地域包括支援センターや自治体の窓口への相談も少ないですが、介護保険制度についてきちんと理解するためにも、自治体独自のサービスを活用するためにもいずれかの自治体の窓口に行ってもらいたいと思います。
  • 介護離職後は、特に精神面、経済面で以前より負担が増したという人がかなり多いです。経済的に厳しくなり、1年以内に再就職している人も多いですが、元のような条件で仕事に就くのは難しいです。
  • 高齢化に伴い介護に直面する社員が増加していくリスクも高まっている現状から、企業は女性だけでなく男性も含めたワークライフバランスの取組を、会社全体で進めていかなければ、組織として持たなくなってきています。
  • 「介護離職から社員を守る」7つの取組をご紹介します。
  • 介護に直面する前からの支援として、①社員の介護の実態、ニーズ把握、②経営トップからの「両立支援方針の明示」、③介護に直面する前からの情報提供、④管理職の理解促進(両立するうえで、一番大事なのは管理職の理解)があります。
  • 介護に直面した社員への支援は、⑤柔軟な働き方が可能な職場環境づくり、⑥柔軟な働き方に即した人事評価制度の構築、⑦介護者同士のネットワーク支援(社内外)です。
  • 日本の財政状況から考えると介護サービスの充実にも限界があります。働き方の調整によって、家族・親族で助け合う、地域ボランティア等、多様な社会資源を活用した持続可能な介護の仕組みを構築していくことが必要です。

(※)2017年1月より、育児・介護休業法の改正により、介護休業の分割取得が可能となりました。
改正育児・介護休業法改正のポイント
コラム「介護休業制度を上手に利用して仕事と介護の両立を!」

パネルディスカッション

『仕事と介護の両立に向けて、介護離職防止対策』

[パネリスト]
・三菱UFJリサーチ&コンサルティング 主席研究員
女性活躍推進・ダイバーシティマネジメント戦略室 室長
矢島 洋子 氏
・NPO法人パオッコ理事長
太田 差惠子 氏
・立命館大学 産業社会学部 現代社会学科教授
津止 正敏 氏
・株式会社ヒューセック
管理部長代理 兼 総務人事課長
滝頭 章司 氏
[コーディネーター]
フリーアナウンサー
唐橋 ユミ 氏

<取組事例>

遠距離介護って何?

NPO法人パオッコ 太田 差惠子 氏

○NPO法人パオッコ
事業内容:離れて暮らす老親ケアの情報支援
企業理念:「ひとりの経験はきっとみんなの役に立つ」

  • 遠距離介護を行う上で気がかりなことといいますと、①今よりも健康状態が悪化しないか、②予期せぬ事故を起こしてご近所に迷惑をかけないか、③誰にも連絡できず、孤独死をしないか、④親の暮らす地域に親を支える協力者がいるか、⑤金銭的に困ることはないか、等があげられます。
  • 遠距離介護における家族支援は、話し相手になるなど情緒的支援、今大丈夫かの状況把握、家事支援(衣替え、時々行って普段できていない家事のサポート)、経済的支援、等があります。
  • 親の状況が悪くなった場合には、別居の子が老親の後ろだてになって、支援・介護するサービスの契約や治療法の決断代行、認知症等になると財産管理を行うこともあります。高齢者を狙った犯罪が増えており、遠隔地からそれにどう対応するかが遠距離介護では重要です。
  • 同居でも近距離でも言えることですが、介護を成り行き任せにする人が多いです。介護
    は長期間になる可能性もあります。親だから、大切な人だからという気持ちだけでは親を支えていくことはできません。特に仕事と両立するに当たっては、すべてはできないので割り切りも大事です。特に遠距離介護はプロジェクト感覚で進めることが重要です。
  • 具体的には、①チームを組む、②ビジョンを練る、③情報収集、④介護資金のプランニング、⑤時間を調整(優先順位付け)すること、等です。
  • ワークショップ等で、介護経験者同士で経験談を話すと他の人の参考になることも多いです。一人の経験が役に立つのです。それはパオッコの理念ですが、皆さんの会社の中でも言えると思いますので、活かして欲しいと思います。

男性介護者ケアメン100万人時代の「WLBモデル」

立命館大学
産業社会学部 現代社会学科教授
津止 正敏 氏

  • 介護する夫や息子を男性介護者と呼ぶようになって数年が経ちます。育児をする男性をイクメンとして社会のモデルとするならば、介護する男性も時代の先端を走る新しい生き方モデルとしてリスペクトしてもらえるようにケアメンと提起しました。社員を守るために介護者同士の交流は非常に大事なことです。
  • 2009年3月8日に男性介護者と支援者の全国ネットワークが設立しました。京都の立命館大学で実施しましたが、北海道から九州まで160人が集まりました。今では会員約700人、30団体あります。
  • 全国各地で様々なケアメンイベントも実施されています。介護体験を語り合い、社会の共有財産としていくための第一歩が始まったと思っており、志は非常に大きいです。
  • 介護者が本当に増えています。50年前はほとんどが女性でしたが、今は主たる介護者の3人に一人が男性です。家事も介護もできず時間もない中高年の男性の介護者が主流なのです。介護者モデルがかなり変容しているにもかかわらず、介護政策は以前のモデルを前提に作られています、仕事と介護の両立の問題は介護者モデルの大激変を背景にしたものでもあると思います。
  • 介護と仕事の両立が可能となるような社会環境をというメッセージを、男性介護者の小さな運動から、発信していきたいと思って活動しています。

ワークライフバランス推進

株式会社ヒューセック 滝頭 章司 氏

○株式会社ヒューセック
事業内容:自動火災報知設備の製造・販売・施工・保守
従業員数:234名(うち正社員169名)(2015年10月現在)

  • 介護休業は1年間取得可能で、起算日より2年の間は分割して取得することが可能です。
    介護短時間勤務は1日6時間勤務を1年間利用でき、フレックスタイム、半日単位の有給休暇も併用可能です。直近の介護休業取得実績は、累計で4名です。
  • 中小企業という規模としても、業界の風土としても、育児・介護休業法に関する制度が利用しにくい環境ではありましたが、労使一体のワークライフバランス推進を通じて、企業風土の刷新を目指しました。
  • その結果、直近10年で制度利用者は増えています。育児・介護を理由とした退職者は0名に、復職率は100%となりました。
  • 2011年に港区ワーク・ライフ・バランス推進企業の認定を取得、2014年には東京都のワークライフバランス認定企業となりました。
  • 取組を進める上で工夫した点としては、お互いさまの企業風土をつくるために、従業員の意識改革をすることです。人財育成の一環である全員受講の階層別研修において、ビジネススキルのほか、会社としてワークライフバランスの取組を進めていくことを発信しています。
  • 独自の取組として、<1:1面接制度>があります。上司と部下が1対1で1時間、業績目標の設定、評価のフィードバック、業務上の悩みや私的事項について話すものです。内容は人事部門にフィードバックする仕組みになっており、人事上の配慮や補充採用に繋がっています。昔からある制度ですが、コミュニケーションが当たり前に図れる職場づくりに寄与しており、重要な役割を果たしています。
  • 社内コミュニケーションのためのイベントとして、本社移転を機にファミリーデーを実施しています。
  • ワークライフバランス推進によって、従業員全員が働きやすい環境をつくり、すべての従業員が能力を十分に発揮でき、結果として会社に活力が生まれることを目指しています。

<パネルディスカッション>

唐橋 まず仕事と介護の両立の課題について、それぞれ男性介護者・労働者・企業の視点からお聞きしたいと思います。

津止 仕事と介護の折り合いをつけながら、両立した男性のサクセスモデルが提示できていないことが課題だと思います。男性の介護者は二重の固有性があると思います。一方では、介護が始まると、自分の責任を果たすことができず、会社に引け目を感じることで男性社会から排除されてしまう。その一方で、逃げずに責任を果たそうとする男らしい介護に没頭し始めてしまうというものです。

太田 労働者側の問題として、自分の親に何かがある、倒れる等をシュミレーションできていない人が多いと強く感じます。そのため、急に倒れた時にパニックになってしまいます。

滝頭 介護は後ろ向きのイメージがあり、言い出しにくいと思いますが、潜在的なニーズは必ずあります。企業としてその隠れた部分をどう引き出して対応するかが課題です。人事部門と各部門の連携を強化し、取組を進めていきたいと考えています。

矢島 各企業に柔軟な働き方のメニューは整備されてきています。それがきちんと運用できているか、つまりダイバーシティマネジメントがうまく回っているかが重要です。制度の使いやすさについては、職場の管理職とのコミュニケーションが鍵です。残業削減などの働き方改革も、管理職も含めて進めていく必要があると思います。

唐橋 次に、仕事と介護を両立するための準備は何をしたらよいかと、その進め方についてお聞きしたいと思います。

滝頭 全ての従業員に介護は誰にでも起こり得ることを理解してもらうようにしています。そして、代替要員の確保、制度の充実等、会社が主導で考えることが必要だと思います。

太田 当事者になった場合、しっかり情報を入手することが必要になってきます。そして、介護保険を柱とし、他の様々なサービスも利用していただきたいです。まずは、自治体の窓口や地域包括支援センターに行っていただくことです。

津止 介護をしていることを周りにカミングアウトしたほうが、両立支援がうまくいくという話をよく聞きますが、問題はカミングアウトできる風土をどう醸成していくかです。企業としては、介護が始まる前の取組を本格的に実施する必要があると思います。

矢島 私は、企業としての事前準備という視点で2点お伝えしたいです。1つは、介護に直面する前の社員にセミナー等で「介護に直面しても辞めないで欲しい」と伝えることです。2つ目は、育児・介護いずれにも言えることですが、仕事以外のことを担うことで時間制約社員が増えても回る組織をどうつくるかを検討していくことが必要です。

唐橋 今、東京都では他の道府県出身者が多いことからも遠距離介護に該当する方が多いと考えられます。遠距離介護について、東京都内の企業、労働者が考える必要があることは何でしょうか。

矢島 企業として、まずは近距離介護の人たちに必要な取組を進めていただくことが基本で、その上で、太田様がお話しされていた遠距離特有のリスク管理に取り組むことが大事だと思います。いずれにしても、フルタイムに近い状態で働けるよう介護体制を作ることが重要で、極端に、遠距離介護だから週2,3日勤務等はイメージしない方がいいと思っています。

津止 しっかりと介護方針を作り、その方針に基づいて、今ある既存の社会資源をどの様に投入していくのか、自分の持てる時間、労力、財力をどの様に配分していくかを考えていくことが大事だと思います。

太田 呼び寄せと簡単におっしゃる方、また経済的支援をしている企業もありますが、私はあまりお勧めしません。住み慣れたところがよいとおっしゃる親御さんがほとんどです。無理に呼び寄せて心身状態が悪くなったり、結局合わずに帰っていったりするケースをたくさん見てきました。親御さんの地元の施設入所も選択肢に入れながら、情報収集をしていくことが大切だと思っています。

滝頭 現時点では、遠距離介護を担う従業員はいませんが、企業としては今後も実態把握に努め、該当者がいた場合は適切に対応したいと思います。

唐橋 仕事と介護の両立に向けて会社として今後取り組んで行きたいこと・取り組むべきこと、当事者に向けたメッセージをお願いします。

滝頭 より迅速に従業員の情報を把握する仕組みをつくっていきたいと思っております。さらにワークライフバランス推進によって、全従業員がいきいきと働き続けることが出来る職場環境の形成を引き続き推進していきたいと思っております。

津止 介護は恐れることでもなく、ましてや恥ずかしいことではないことをしっかりと伝えていきたいと思っています。

太田 万々歳の介護をしている方はほとんどいないと思います。親の意向を全部聞くことはできないですし、こちらの都合を押し付けることはできないと思います。双方の落としどころを探っていくことが大切です。また、仕事は辞めないという強い意志を持って取り組んでほしいです。

矢島 一言で、ダイバーシティマネジメントと言っても、これまでの企業の取組は、育児支援、働き方等、各課題別に動いていたような気がしています。そんな中、介護の問題を検討すると、自分事として動いてこなかった管理職層が動いてくれるため、推進の意味ではプラスだという声もあります。介護の問題が出てきたことは、大変なことも多いですが、今一度、組織のあり方を考えるうえでは良い契機になるのではないでしょうか。

東京労働局雇用均等室の取組

東京労働局雇用均等室長 元木 賀子 氏

  • 仕事と介護の両立について、先頃、総理から介護離職ゼロを目標にしまして、仕事と介護の両立が出来る社会環境にという三本の矢の内の一つが出たところです。
  • 厚生労働省はそれに先んじまして、2014年の11月から今後の仕事と家庭の両立支援に関する研究会を立ち上げています。報告書が先月の9月にまとまりましたので、ご紹介します。
  • 介護離職されている人が非常に多くなっており、介護を理由に離転職した雇用者の数はおよそ5年間で44万人です。
  • 介護休業や介護休暇制度を利用している人は非常に少なく、例えば介護休業の取得率は男女計でも3.2%です。
  • このような状況を踏まえ、今後の両立支援の基本的な考え方を、「多様な介護の状況に対応しつつ継続就業できる制度の実現」として、介護休業取得要件を緩和する等、さまざまな提案をしています。
  • 報告書を基に、現在、厚生労働省の労働政策審議会で、今後の仕事と介護の両立支援対策について検討がされています。いずれ結論が出ましたら、育児・介護休業法の改正について、国会に提出し、改正法の施行という流れになろうかと思います。
  • 仕事と介護の両立実践マニュアルの資料を同封しております。こちらは企業向けのマニュアルですが、労働者向けのマニュアルもあります。厚生労働省のホームページを見て頂けたら、ダウンロード出来るような形になっておりますので、是非ご利用頂ければと思います。(※)

※厚生労働省ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/model.html

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